第九話「惨め少年ボクサーKENN」
開始と同時に思い切ってコーナーを飛び出した僕だった…強烈なボディー、
あっという間に相手が…
気づいた時は僕はもうキャンバスで四つん這いに…
「KENNくんダウーン!ワン、ツー!スリー…」
格闘技の本能か、悔しくてたまらない…必死の思いで立ち上がる僕…
「セブン!エイト!」気が付いたとき僕はレフリーに両手を…「ボックス!」
うわっ…駄目だ、脚が素になったみたいでまるで言うことを聞かない…
それに苦しくてパンチも思うように出せない…これじゃ…
ハイソックスを履いた白のリングシューズの脚…ガクガクして…
「どうした!カワイ子ちゃん!」「じっくり痛めつけろよ!」…
ニュートラルコーナーから獣のように襲いかかる相手の子…
薄ら笑いを浮かべながら細かいパンチを僕に…
あっという間にロープに詰められた…そしてボディー…
ガードが下がるのが自分でもわかる…棒立ちの僕の顔面にジャブの嵐…なされるがまま の僕…
回り込んで逃げることも出来ない…
鼻血が出たのがわかった、ジャブの嵐はつづく…サンドバックのような僕…
のどのほうに血が回ってくる…苦しい…もう駄目だ…ダウンだ…
でもロープを背負って…前からは相手のパンチ…最後の力を振りしぼるつもりで右に…
ガクッ…完全にグロッキーだった僕の脚はあえなく折れてロープ際に2度目のダウン…
口の中も切られたみたいだ…はみ出たマウスピースの脇から血が…やられた…しかし…
レフリーのカウントが遅い…変だ…
やっとのことでまた四つん這いの体勢の僕をレフリーが抱き起こし…
そんな…「まだできる!ファイト!ボックス」
相手は僕をからかうようにわざとパンチを空振りさせたりしている…そしてゴング…
やっとのことでコーナーに戻った僕…マウスピースを自分から吐き出した…真っ赤な糸 …
「コーチ、僕もうだめです…」コーチは相手にしてくれない…
僕の口にビール瓶を押し込んでむりやりうがいさせた…
バケツの中に吐き出す真っ赤な水…
そしてまたマウスピースが口の中に…ゴング!コーチは僕の背中を押し出した…
あっという間に目の前に相手が、脚は?やっぱり駄目だ動かない…
せめて1発だけでもコイツに…しかし願いはむなしくまた僕はメッタ打ちに…
相変わらず面白いように顔面を打たれる…また鼻血が…口の中も…
マウスピースを吐き出したい…口の中は血で一杯…
そこへ、相手のフックが…僕の口からマウスピースと血が飛び出した…
そしてまたキャンバスに這いつくばる…
咳き込む僕…また口から血が…
目の前のキャンバスは僕の血で真っ赤になっている…
悪夢だ…レフリーは今度はカウントも取らない…試合終了?
いいえ…また僕を抱き起こしたのでした、
そして血まみれのマウスピースをくわえさせたのだった…
残念ながら僕はこの後のことを覚えていない…気がついたときは大の字にダウンしてい て
レフリーが僕の頬を平手打ちして…
相手の子が僕のトランクスの上にシューズを乗せてガッツポーズ…カメラの放列…
意識が朦朧としたままコーチが僕を抱き上げてくれた…「がんばったな!」「…」
控室に抱えられていき「しばらく休んでろ」コーチは出て行った…
入れ替わりにMが来てくれた。「大丈夫か?」グローブを外してくれて氷とタオルも…
「ひでー顔になったな!、でも最後見直したぞ!」「???」
無意識のうちに僕は最後の反撃をしたらしかった…
それにしても鏡に映った僕…ちょっぴり自慢だった顔…ボコボコに…
トランクスも血まみれ、ハイソックスもシューズも…
そんなことよりKくんが…
僕はふらつく脚でリングへ…「おお!さっきの子だ!」とか言われながら…
それにしても、「こんなの試合じゃない!」悔しさ、怒り、そしてそれでも変な興奮が
ズタズタになった僕の身体かけめぐっていた…
リングにはとびきり可愛いKくんが…
続く
とびきり可愛い・・・
(画像と本文は関係ありません)