第八話「M奮闘、そして・・・・」
ジムには先輩の無残なノックアウトシーンの興奮の余韻が漂っている・・・・
そしていよいよ僕達小学生選手の試合の番が来た・・・
僕にもKにもいよいよバンテージをつけた拳にグローブがつけられた・・
それが・・小さめで・・しかも硬いような気がした・・・・これって?
なぜか、一番強いMが最初にリングにあげられた・・・・
Mだけは僕とKくんみたいな短いトランクスじゃなくて普通の白のトランクス・・・
僕達とは違う、Mの体つき・・・・
相手の子・・・Mよりリーチも脚の長さも短い・・・
けれど全身筋肉みたいな体つき・・太い首廻り・・・そして黒のトランクス・・
2人がリングに上がっても、先輩の時のようなヘンな歓声が上がらない?
「Mたのむぜ!」と僕、「Mくんファイト!」とKくん・・・・・
Mは力強く僕達に拳を突き上げて見せた・・・・
静寂の中?ゴング!
2人の小学生の鋭いフットワーク、履きこまれたリングシューズの立てる
キュッキュッという音、そしてグローブのぶつかり合う音・・・・
マウスピースをはめた口から吐き出されるシッ、シッという呼吸の音・・
そして相手コーナーからの叱咤の声だけが・・・・・
がむしゃらに前に出てくる外国人学校の選手、Mは下がりながら次第にペースをつか む!
強引なパンチをフットワーク、上半身、ガードでかわしながら時折鋭いパンチを決め る。
『Mはやっぱりすごいな・・』
顔面へのジャブで相手の子の顔が赤らんできた・・・しかしどんどん前に出てくる・ ・・
ボディー、顔面へ正確なパンチを決めてゆくM。
M圧倒的優勢で1R終了!
まばらな拍手がMを迎える・・・初めての日本人少年の優勢なのに・・・どうして?
客席を見回す、好奇の目は僕とKくんに・・・・・
僕ら2人の写真を撮りにくるおじさんも・・・・・
2R開始
状況は1Rと変わらない、圧倒的にM優勢だ、ただ相変わらず、打たれても打たれて も・・・
『なんて打たれ強いんだ・・・僕だったらとっくにダウンしてるだろうな・・・』
後半、ついにMの顔面へのストレートが炸裂!相手の子は鼻血を・・・・
それでも変わらず前に・・・・・Mまたも圧倒的優勢で終了した。
コーナーへ戻るM、1Rと違い息があがっている・・・マウスピースを自分から吐き 出した・・・
「M、ラスト1Rこの調子でいけ!」「は・・ハイ」
「無理するな、相手のパンチを良く見ろ!捨て身で来るぞ!」「はあ・・・・は・・ ・・ハイ!」
モグモグッ・・・マウスピースをはめられると最終ラウンドのリングに飛び出すM・ ・・・
3R開始
コーチの予想通り、相手の子は一層がむしゃらに前に出てパンチを振り回す・・・・
Mはちょっと動きが鈍くなってきた・・・・
1Rから下がりつづけてきたMのフットワークも徐々に・・・・
鼻血をだらだら流しながらパンチをMのガードの上から打ちまくる相手・・・
M、手数が少ない・・・・
『あれだけMの鋭いパンチを浴びたのにダメージないのか!コイツ・・・』
相手コーナーから訳のわからない声が・・「○×★&%$!」
「ラスト1分!」コーチが声を掛ける!
益々相手の攻撃は激しさを増す・・・いつのまにか防戦一方のM、しかしパンチはも らっていない!
ニュートラルコーナーに追い詰められるM、右に回ろうとした一瞬!
ついに相手の左がMの顔面を・・・
すごいパンチ力だ!Mはニュートラルコーナーに強引に詰められてガードの上から猛 攻を・・・・
興奮する相手コーナー・・・・
「Mがんばれ!あとすこし!」
ラスト20秒ぐらい・・・Mの脚は完全に止まったままだった・・・そしてゴング・・ ・・
試合終了だ!
意気揚揚とリング中央へ戻る相手・・・
ガクッ、カクッとぐったりレフリーのところへもどるM・・・・・
「勝者赤コーナーMくん!」
高々とあげられるMのグローブ!
しかし、相手のコーナーからは罵声と猛抗議が・・・・
「Mおめでとう・・」「・・・・・KENN脚使ってがんばれよ・・・」
Mの顔も少し脹れている・・・
『ああ・・・ついに僕の番だ、ちょっと効いたらダウンしちゃえば・・』
「KENNいくぞ!」コーチが・・・・
「KENNちゃん、がんばって・・・」Kくんのかわいい顔も緊張で・・・
思い切ってリングへ・・・すると・・・また妙な歓声が上がる・・・
「待ってました!バンビちゃん!」『なんで?僕達のアダナを・・』
僕の名前が呼ばれる・・・「赤コーナー○○ジムKENNくん〜」
口笛と野次・・・・
「青コーナー○○初等科Pくん」・・・・・
脚の付け根が思いっきり切れ上がった白の短いトランクス一枚の僕・・
白いハイソックスと白の長めのリングシューズで・・・・
相手の子・・・・やっぱり小学生とは思えない・・・・・
思いっきり僕をにらみつける・・・
リング中央でレフリーから注意を受ける、ニヤリと無気味に笑う相手・・・・
ついにゴングが・・・・
『僕だって・・・運動神経いいんだ・・・』
恐怖に自らを奮い立たせる僕・・・・
とにかく脚を使って・・・・・しかし・・・相手のフットワークはそんなもんじゃな かった・・・
「あっ!」・・・・・開始早々強烈なボディーを食った・・・・
内臓に手を突っ込まれたような・・・
脚が・・・・・ああ・・・早くもキャンバスに這いつくばる僕・・・・
続く
まるで、ブルマーのような・・・
(画像と本文は関係ありません)