「消えた??チビッコ・ボクシング大会」

 DIV(2)<侵入経路>

 TVローカル・ニュースでボクシング大会を目撃した翌日。私は新聞を買いあさりましたが、どの地方版にも記事が載っていません。一体どこであったのでしょうか? 誰の主催で……。呆然とTVのナレーションを聞き逃したばかりに……。

 翌年、私は他の府県に進学・就職してしまい。以後、この「事件」を忘れてしまいます。数年後に再びUターンするまでは。

 目の前で、再び「事件」を目撃することになったのは、確か昭和が間もなく終わろうとする年だったように記憶しています。

 数年前と同じ……ある日の夕暮れ、またもや地元TVニュースの画面に突如現れたのです! チビッコ・ボクシング大会が!!

 "某町民体育館で行われた大会には、県内から3つのボクシング・ジムが参加。小学生とはいえ、ヘッドギアに大きなグローブで大人顔負けのファイトを……"。

 食い入るように画面を見つめる私。今度はアナウンサーのコメントを聞き逃しません。画面では小学高学年や中学生ぐらいの激しい撃ち合いが、次々に展開しています。もちろん、おもちゃのグローブなんかじゃありません。

「そうか、毎年この日にあるんだ!」。

 そうです。大会はある特定の祭日に開催されていたのです。

 来年のこの日には、夢にまで見た小学生・中学生の熱い闘いが見れるのです、実際に!! 来年こそ!!

 しかし、不安も残りました。数年前と同じように、翌日の新聞はどこも取り上げてないのです。月初めの朝刊まで遡って当たりましたが、"催し&イベント情報"の類にも全く掲載されていませんでした。チビッコ・ボクシングをTVは「色物」的に面白がり、お堅い新聞は黙殺と言うのでしょうか??

 いけない……。これでは、肝心の「どこで」あるか分からない可能性が出てきました。

 そして、不安は翌年の大会直前まで解消しません。普段なら小さな少年サッカー大会の結果まで載せる地元新聞は、またもや月初の予定欄に何も情報を……。

 思い余って、祭日前、府県の体育関係セクションに電話で聞いてみることにしました。(何も悪いことをしていませんが、)なぜかドキドキでした。もし、「なんで知りたいんですか?」と役所の人に聞かれたら……。

 役所でも情報が分からないらしく、回答に困っている様子。このままでは、あの美しいBOXING BOYたちに会えないのか? また夢に戻ってしまうのか!?

 不安いっぱいの公衆電話の向こうから、やっと"希望の声"がしたのは数分後でした。

「あ、ああ……。お待たせしました。第X回○○県チビッコ・ボクシング大会は……。XX高校の体育館で開催となっていますね」。

「わかりました。お、お手数おかけしまし……た

 (電話を置いた瞬間、私はボックスのガラスをバーーンと叩いていました。もう夢でも妄想でもないのです。BOXING  BOYたちの飛び散る汗をこの眼で目撃できる。堪能できる。彼らに会えるのです!

 一年間、待ちに待った運命の祭日……。

 私は車を飛ばしていました。3時間以上もかかってXX高校の校門にたどり着きます。催し看板も立ってませんが、もう大丈夫です。乱雑に校庭に置かれた自動車。体育館の入り口付近には、幼稚園ぐらいの子達が持て余した暇を潰しています。高校にはあまりない光景でしたから。そして、体育館入り口からは……「カーーン!」という夢の鐘が響いて!

 いよいよです。夢の瞬間に出会える侵入経路を見つけたのです……。

(つづく。たぶん……)

 

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