「消えた??チビッコ・ボクシング大会」
DIV(1)<UNKNOWN PLEASURE>
「チビッコ・ボクシング大会」……。
そんな夢のような空間が現実にあったなんて。
ある休日の夕食時、TVローカルニュースに突然あらわれた映像に、私こと猫Gは箸すら動かさず、画面を食い入るように見つめてしまった覚えが……。
プロが試合で使うようなリング。どこぞの体育館(衝撃の大きさに聞き逃した)の本格的な会場は、まだ高校生だった猫Gが目撃した県総体ボクシング大会とそっくりでしたが……。
決定的に違うのは。リングでグローブを交えているのが“小学生”だったことです!
いきなりアップショットになるゴング。と同時に「カーーン!」という胸踊る金属音。初っ端なからニュース映像は、小学校5・6年ぐらいの少年の試合を映し出しています。
一人はア○ィダスの白サッカーパンツ(!)&青系の陸上競技RUNシャツ。彼のストレートを見事にガードする対戦少年は……なんと、「そりゃ、どう見ても学校指定の運動着短パンだろ!?」。
驚愕のゲームウエアです。
大きめのグローブやヘッドギアーこそしていますが、二人とも履いているのはバスケットシューズ……。恐らく、“体験ジム入門”のつもりが、「いつのまにか……リングに」のパターンか? もしくは、スポーツ万能で他のスポーツとの掛け持ちなのでしょうか?
「あったのか。こんなのが……本当に」。
ウエアが他のスポーツの流用なのとは対照的に、動きは「トレーニング積んでるなっ!」という印象です。「キュ、キッュ」とシューズをうならせるフットワーク。稚拙ながらもコンビネーションで仕掛けるア○ィダス少年の攻め。必死に防戦していた青い小学生短パン君が一瞬でも怯もうものなら、一気にロープまで追い詰めて……。
ただTVを見つめるだけの猫G……。
妙な緊張と驚きで口の中が乾いていきます。
ニュースの後半は、小学低学年の対戦でした。“風船グローブ”(※1)とブカブカのトランクス姿。その試合模様が流れていましたが……。もう、ろくに覚えちゃいません。
TVニュースは「あっ」という間に終わってしまいました。
一瞬のうちに事故にあったような。奇妙な衝撃が猫Gに残りました。
(※1:昔、そういうグローブやヘッドギアが売り出された記憶が。確か、ラテックスとか、なんとか? どなかた知りませんか)
猫Gは食事もそこそこに自室に引っ込んでしまった記憶があります。とてもじゃないが、平静に飯など食える心境じゃない。
(以前も掲示板でお話したように、)猫Gには「ある夢想の趣味」があったわけで……。中学時代のサッカー部エース少年とバスケ部ハンサム少年を空想のBOXで闘わせたり。ライバルに見たてて、壮絶な試合のストーリーを想像したり。たまに、気弱な猫Gがサッカー部エース君に死にモノ狂いの挑戦を……。
誰にも言えない“空想の趣味”。
まるで漫画みたいな自作の都合いいストーリーで、自分の奥底にある欲望を満足させていました。
なぜ、そんな空想が嘘っぽくならないか?
そのベースとなっていたのは、「小学校や中学にボクシングなんて有るわけがない」という認識だったわけです。漫画やアニメーションで「もしかしたら、スポーツ少年団や中学には、ボクシング部があるのか??」って本気で考え、「そんなものはあるわけがない」と知り、子供時代の空想とはお別れです。
言いかえれば、現実には「あしたのジ○ー」も「がんばれ○気」もいなかった。だからこそ、現実にはあり得なかったから“夢想”遊びは嘘っぽくならずに成立していたのです。
それが、今!「いや、本当はあったんだ」という圧倒的な事実にぶつかってしまった! これは夢想でも、妄想でもない。
……「チビッコ・ボクシング大会」ことを知ったのは、確か1983年。まだ、ファ○コン・ゲームなる夢食う獏が普及する前夜でした。ましてや、インターネットなど、SFにも描ききれていない時代。
翌日、猫Gは駅のスタンドに駆け込み、新聞を買いまくることになります。あまりの驚愕に聞き逃したTVニュースでの事実を知りたい。ボクシング大会は今度いつあるのか? どこで? だれがやってる? 会場に行けば、“サッカー部エース少年 VS バスケ部ハンサム少年”みたいな試合を本当に見られるのか?
この目で。この“夢想”しか知らない心でも……。
「チビッコ・ボクシング大会」……。
そんな夢のような空間が現実にあったなんて。猫Gにはまだ信じられませんでした。見知らぬ喜びが指先の手前に転がっているように思えて……。
UNKNOWN PLEASURE
(つづく……多分ね……)
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