長い夜だったか
短い夜だったか
激しい夜だったか
静かな夜だったか
あなたには
わたしには
第五話
ミサトは早めに帰ってくると猛然と部屋のかたずけを始めた。
自分でもおかしかった。
「男が部屋に来るとなると違うか。わたしも女だったんだね。」
癖になった自嘲癖が顔を出そうとする。
ブラジャーを外すと、はずむようにたわわな胸がこぼれ出た。
腕も体の線も細いのに、乳房だけが豊かに実っている。
私は、加持になにをもとめているんだろう。
やすらぎ?
愛情?
そんな陳腐なものじゃないはず。
でも。
もう、あいつのいない夜は耐えられそうにない。
たった一晩、ただ、一緒に過ごしただけの男なのに。
でも。
わたしはあいつに私自身を委ねようとしいる。
あいつに一緒にいて欲しい。
あいつと一緒に眠りたい。
ただそれだけのために。
あいつと一緒に遊園地に行きたいの?
あいつの布団の中で、子供のように眠りたいの?
暗がりから声がした。
「さ、こっちにおいで。」
ミサトは、顔を火照らせて、鏡に映った、挑発的な自分の姿を見た。
「まって・・・」
小さな声で言うとミサトはショーツを下げていった。
締まった足首から抜き捨てると、声の方へ向き直った。
部屋の奥の暗がりから再び自分を呼ぶ声が聞こえた。
爆発しそうな動悸。
女はそちらへ歩み寄っていった。
これは儀式?
男を手に入れる為の?
かたずけがおわると、念入りにシャワーを浴びた。
髪を梳き、うすく化粧をした。
わたし、何の為にシャワーを浴びているの?
汗臭いといやだから。
汚れているところを見られたくないから。
違う。
わたしは、貢ぎ物だから。
私自身から、加持君への貢ぎ物。
贄といっても、プレゼントといってもいい。
奉げ物になっている自分。
なぜ?
加持は、ミサトを抱き寄せると何も言わず、やや強引に長いくちづけを交わした。
舌を絡ませ、呼吸を支配する。ややあって唇を離す。
「いい顔だよ。」
睫毛を伏せて、可憐な唇を半ば開いてあえぐミサトを加持は可愛いと思った。
形のいいふくらみにくちづけをし、乳首を口に含みそっと舌でころがす。
「あ。」
ミサトは思わず声を漏らした。そこが初めて感じる他人の唇と舌先の感触。
胸元から切ない刺激がさざなみのように広がって行く。
「加持君・・・。」
ミサトは、火のような喘ぎを吐いた。
めまいのようなものを感じ足元がふらつく。
加持の左手が身体を支え、右手は乳房から脇腹に滑り降りて行く。
あたたかい、男の手の感触。
喘ぎを、とめられない自分。震えるほどいとおしい感触にミサトはまた声を漏らす。
加持の右手は堅く閉じられた股間の感覚を楽しむように暫く腿をなでていた。
しばらくすると指先から少しずつ内側に潜り込んでいく。
そして暫く軟らかなそこの感触を確認すると指はまた乳房に戻っていく。
唇は反対側の乳首に移ってそこをまた転がし始める。
ミサトの理性にに少しずつ霧がかかってゆく。
ミサトの脳裏に初めて紹介された時、加持と交わした握手の感触、
指の感触が蘇った。
加持の指。長くて、太くて、ふしのある、大きな手の指。
それでいてやさしい、暖かい、感触の指が。
あの指が、
わたしの身体に・・・
触れている・・・。
わたしの髪をなでる指。
指と絡む指。
瞼に触れる指。
頬に触れる指。
手を包む指。
唇に触れる指。
首筋を流れる指。
乳房に触れる指。
下腹部に当てられる指。
腿を滑る指。
柔毛を梳く指。
そして。
私の喘ぎを紡ぎ出す指。
その指は、身体の起伏をゆっくりとなぞっていった。
壊れ物を扱うかのように優しく、ゆっくりとなぞっていく。
暖かい指と手のひらの感触。
胸から、腋、腰から大腿部。
そしてミサトの一番柔らかな部分へ。
「加持・・・待って。まだだめ。まだ・・。」
「何が、だめなんだい。」
余裕を持った、加持の声が耳元で聞こえたのと同時にミサトの身体が震えた。
「指が・・・加持の指が。」
加持の指がミサトの股間にもぐりこんでいる。
ゆっくりと、柔毛の間に隠れるミサト自身を愛撫している。
何回か何十回か。形に沿って扉を梳くと温かい泉が湧きあがってきた。
加持の指はそれを掬い取ると静かにそこに沈み始めた。
指が…私の中に入り込んでくる。
ときたま、別の指が敏感な部分を刺激する。
腰がしびれるような心地よさが下半身を支配する。
激しい吐息が漏れる。
「あっ。」
思わず声を上げる。
あらがいたいような感覚が襲ってくるが、もう腕に力は入らなかった。
どのくらいの時間そうして、立ったまま愛撫されていただろう。
二人の、荒い息遣い。
指先が胸の下の傷口で止まった。 胸の下を斜めに走る傷。
ここから、ミサトの全ての物語が始まったのだ。
「痛いかい?」
「ううん、…古い傷だもの。」
やっとのことで、激しい吐息とともに答えるミサト。
加持は、膝を突くと傷に舌を押しあて、舐めとろうとでもするように愛撫し始めた。
「あ・・・・・。」
ミサトは熱い感情がこころの中から吹き出してくるのをはっきりと感じた。
加持は傷に唇をつけたまま、力の抜けたミサトを横抱きにかかえ上げた。
ミサトは少し焦った。
内腿に温かいぬるりとした液状のものが流れ出しているのを知っていたから。
それは膝を越えて内腿を濡らしていた。
加持に知られてしまう!
そう思うと自分の顔が、急にカッと熱くなるのが分かった。必死で、訴える。
「加持、くん。待っ、て。」
かまわず加持はミサトの体をベッドに横置きにして下腹部に舌と指を這わせていった。
ミサトは、必死で膝を閉じようとしたが、ガクガクと足が震えて力がまったく入らなかった。。
「大丈夫だよ。葛城。」
遠くのほうで加持の声が聞こえたような気がした。
ベッドにどのように横たえられているのかも、もうわからなかった。
自分が途切れなく、喘ぎ声を発している事が、ぼんやりと意識できただけだった。
青みがかかったように白いミサトの下腹部から腰、鼠茎部、内腿にまで加持はゆっくりと
ミサトの喘ぎ声を聞きながら、唇と視線を進めていった。
「はあ、ああ。いや、んんあ…・・。」
ミサトの身体の細かい震えを感じる。足が震えている。
加持は身体を起こすとミサトの間に身体をすすめた。
「・・あ、だめ、恥ずか、しい。はあ・・。」
そして、ミサトの一番大切な部分に唇を付けた。太股が加持の頭をぎゅっと挟み込む。
しかし、力はない。加持の舌がミサトの芽をつつき、そっと歯に挟む。
「あうっ。あああっ。」
ミサトの悲鳴。かまわず、加持は唇でそこを吸い上げてゆっくりとねぶる。
「は、はあああん。あ、あああん。」
泣き声のようなミサトの甘い嬌声が男を激しく刺激する。
唇を離し、身体を少し起こすと目線の下に、髪をひろげ、喘ぎ声をあげながら、
すっかり自分のものになっている、無抵抗なミサトがいた。
ぴくり、ぴくりと身体が痙攣する。
「はあはああっ、はああん。んんん…。」
一瞬、正気が戻ってきた。いたたまれないほど恥ずかしい。
ミサトは、いつのまにか自分がすっぽりと加持の腕の中にはまり込んでいる事に気付いた。
そして、自分がどんな姿態を晒しているかも知らざるを得なかった。
でも、最後に、ひとつだけ加持に約束してもらいたい事…。
「加持・…、お願い。」
加持は愛撫の手を止め、目線を合わせる。
黒目がちの瞳が、加持をじっと見詰めていた。
火のような瞳だ…と、加持は思った。
「うん?」
「 約束して。……わたしを。」
ミサトの喘ぎは、甘い香りとなって加持の嗅覚を刺激した。
加持は、このくるくる動く大きな瞳をした娘の望みをかなえようと思った。
その瞳の力が急に弱くなった。
「わたしを置いて、いってしまわないって…。置いていかないって……。」
そう、濡れた目でつぶやくように繰り返すと、ミサトは睫毛を閉じた。
涙がにじんで、落ちた。
加持は自分が、この娘の事を何も知らないでいる事に突然、気付いた。
「わかった。」
言葉を継いだ。
「約束するよ、葛城。」
そして、自分が、他ならぬこの自分が、この娘を、ひどくいとおしく思っている事にも
いまさらの様に、気付いたのだった。
(俺は、どうやら本当に…。)
「決して、きみをおいていったりはしない。」
もう一度、ゆっくりと加持は繰り返した。
「おいていったりは、しない。」
そして、ゆっくりと体を沈めていった。
柄にもなく、緊張していた。
ああ、加持が。私の中に入ってくる。 熱い。 私の男。
ずっと、ずっと、一緒にいてくれるよね。
ミサトの身体が、二、三度、ほんのすこし跳ねた。
身体を裂いていく痛み。
喘ぎとため息。 小さな悲鳴。 荒い息づかい。
加持は少しずつ進み、そして、止まった。
「葛城…・。」
「加持・・くん。」
もう一度くちづける。
これは、誓い。
これは、約束。
そして再び静かになった。
ミサトは、その夜、加持に抱かれて眠った。
部屋の外は月の無い漆黒の夜であった。
第伍話 約束の意味は
おわり
やっと頭のところまで戻ってきました。
同じシーンを時系列をランダム化して書く。というのをやってみたかったのですが、
なかなかむずかしいし、18禁という縛りはあるし。
ミサトの心理の深化が進んでいるでしょうか。ここからどうやって話を進めれば
よいのでしょう。ああああ、だめだああ。誰かアドバイスしてくれえ!!
こめどころ