*永遠の一瞬*

 
                    {休暇前夜}

 トントントン・・・グツグツ・・・カチャン・・・・・・
夕餉の支度をするシンジ、その後ろでクッションを抱えてテレビに見入っているアスカ・・・
                                   いつもの葛城宅の日常・・・

「ねぇ、シンジ〜まぁ〜だ〜〜?」「アスカ、もうすぐ出来るよ。
                       今夜はミサトさんも早く帰るって行ってたし・・」

ガチャン・・・バタン・・・「ただいま〜シンちゃん、ごはんは〜?」

「あっ、お帰りなさいミサトさん、もう10分待っててくださいね。」

「へぇ〜珍しいわね、ミサトがこんな早く帰って来るなんて・・・」「お帰り、ミサト」

寝そべりながら振り向くと喜色満面のミサトが視界に飛びこんできた。

「あっ、そう?出来たら呼んでね♪」そう言うと、そそくさと部屋に戻ろうとする。

「解りました、ミサ・「ちょっと、ミサト?」」

シンジの言葉をさえぎると、アスカがミサトに疑問の目を向けて言った。

「何時もなら着替える前に冷蔵庫からビール出して飲もうとするのに珍しいじゃない?」

「なぁ〜にを浮かれてんのよ、加持さんに押し倒されたの?」

ガチャチャ・・・<こけるシンジ>・・・一瞬呆れた目でシンジを見ると、すぐにミサトに視線を戻す。

「チョ〜ッチね、後で話すわよ。」ミサトは、それだけ言うとアスカにウィンクして部屋に入っていった。

「な〜〜んか気になるわね〜、シンジもそう思わない?」クッションを抱き締めて胡座をかくと、
テーブルに料理を並べ始めたシンジに同意を求めるアスカ。

「ルールル〜♪ルラ〜〜♪♪」部屋の向こうからミサトの歌声とも
                              ハミングとも言えない声が聞こえている。

シンジは、くすっと笑うと「確かにそうだけど、暗い顔して帰って来られるより良いと思うよ。
                                    アスカもそう思わない?」

「それに、後で話すっていってるんだから、ミサトさんが言い出すまで待ってようよ。」
珍しく大人の発言をしてニッコリ微笑むシンジに驚きつつ、アスカはちょっと赤い顔をしながら
「ベ〜」っと可愛い舌を出して応対の代わりにすると、またテレビの画面に向き直った。

テレビの前のアスカと、ミサトの部屋をちょっとだけ眺めると、
              シンジは肩をすくめて何事もなかったかのように食事の用意に戻っていった。

ミサトの部屋からは、まだ歌声?とゴソゴソと言う音が聞こえていた・・・・・・・・・・・



                   {お留守番の事}

「ちょっと、どういう事よ!!」
                    両手でテーブルを叩き、凄い剣幕で抗議するアスカ。

「だから今言った通りよ♪」聞く耳持たずと言った調子で平然と返すミサト

「最近のパターンだと、1回使徒が現れたら2ヶ月は来ないから休暇を貰ったのよ、加地君と二人で♪」
「幸い、先週の出現では人的被害もEVAの損傷もナシ・・・だったでしょ、だからよ、だ・か・ら♪」

噛み付きそうな勢いでアスカが返す。
「だ・か・ら♪じゃないでしょ!アタシが言ってるのはそう言う事じゃないわよ!!」
「曲りなりのも私達の保護者でしょう!!!」
「そうよ、その保護者が大丈夫だと思ったから旅行に行くのよ♪」
「なっ!#〒♂♀!!」
真っ赤な顔で言葉に詰まるアスカに、シンジが引きつった笑顔で助け舟を出した。

「父さん・・いや碇司令と冬月副指令が良く許可を出しましたね。」
シンジの言葉に同意の相槌を打つアスカ、それに対してミサトが発した台詞はこうだった。
「司令も副指令も最初はごねてたわよ、でもこう言ったらOKしてくれたわよ。」
 
・・・・・{「私と加持くんが1日2日いないくらいでここの機能が麻痺するとは知りませんでした。」}
     {「・・・解った、明日午前九時より加持・葛城両名に48時間の休暇を許可する・・・」}
目が点になるアスカ・・・シンジは固まっていた・・・(苦笑)
<恐らくシンジの後頭部には巨大な汗の珠が出来ていたであろう・・・^^;>

それを無視してさらに続けるミサト
「面白かったわよぉ〜、司令と副指令が同じ動きするの・・・」そう言うと、
             うつむき、指をこめかみに当て首を左右に振るポーズをして見せるミサト
「司令の違うポーズって初めて見たわ」<やはり・・・無敵です^^;>
「そう言う事で明日早いからもう寝るわね、オヤスミ、アスカ・シンちゃん」ミサトは言うだけ言うと
二人に手を振り、嬉しそうに部屋に戻っていった。

パタン・・・(キャ〜嬉しぃ〜〜リョウジと旅行なんて何年振りかなぁ)
踊り出しそうな雰囲気で明日の用意を確認するミサト・・・
「準備良し♪」窓から外を眺めると「来るんじゃないわよ〜使徒ぉ〜」そう言うと、窓辺に串刺しにした
サキエル人形を吊るす・・・・・・<て・・テルテル坊主並か・・・?使徒って^^;>
「ウフッ、思いっきり楽しんでこようっと・・・」そう言うと幸せそうに眠りについた・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・固まったキッチンの二人を残して・・・


                   {出撃(笑)}


 朝6時30分、ミサトが目を覚ます・・・・・・・・・

「ん・・・んん〜〜〜っ」大きく伸びをすると窓の外を見て嬉しそうに呟く。「うん、ドライブ日和ね〜」
楽しい事のある日は誰でも早起きになるらしい。

ミサトは布団から抜け出すと、まだ明かりの付いていないキッチンを抜けてシャワーを浴びに行った。
30分ほどしてシャワーを浴びたミサトはキッチンでコーヒーメーカーのスイッチを入れてから
身支度に戻る。

 暫くすると、シンジがコーヒーの良い香りで起き出してきた。
「ミサトさん珍しい事なんかして、雨が降らなきゃ良いけど・・・」シンジはクスッっと笑うと
ガスレンジに火を入れて洗面所に向かった。

 8時30分、玄関にミサトの声が響く
「じゃあ行ってくるからね、アスカ・シンちゃん」
「二人っきりだからってイケナイ事しちゃだめよ♪」
「馬鹿言ってないでとっとと出かけなさいよ!」
アスカが返すと二人にウィンクしてミサトは出かけていった。
「ホントに行っちゃった」シンジの顔を見ながら、半ば呆れ顔でアスカが呟く。
「即行動のミサトさんらしいけどね。」笑いながらシンジが返す。
そして問い返すシンジ「今日は学校も休みだし、どうしよっかアスカ?」
アスカは暫く考えるとシンジに言った
「ミサトと加持さんだけ楽しむなんて許せないわね。」
「アスカ、じゃあ僕達も何処かに行こうよ」
「そうね、思いっきり楽しみましょう」
シンジの提案に頷くとアスカは嬉しそうに準備に戻っていく。
<シンジとアスカにもドラマは展開するが、それは又、何時か何処かで・・・>

 その頃ミサトは肩に掛けたバッグをリアシートに放り込むとアルファを駆り、
勢い良くガレージから加持の元へ飛び出していった。

                  
                   {ドライブ}


 ヴォ〜ワァ〜〜ン、ギャァーガリッ・・・
派手なマシンノイズと着地の音と朝日を背に、アルファが坂の上にある加持のマンションの前に着くと、
既に待っていた加持が呆れ顔でミサトのアルファに近づく。
「おはよう葛城、時間に余裕があるんだから、そんな騒々しい登場しなくても良いだろう」
苦笑いしながら加持が言う。
「貴重なOFFなんだから1秒でも勿体ないのよ、加地君♪」
「休暇まで、後3分あるよ」笑いながらミサトの言葉を茶化すように言うと、ナビシートに体を沈める。
「細かい事言わないのっ」ミサトも笑いながら返すと、シフトをローに入れてアクセルを踏む。
「で、何処に行くつもりだい、葛城」くわえタバコでのんびりと聞く加持を視界の隅に捕らえながら、
嬉しそうにミサとが言う。
「適当にドライブしながら温泉で一泊・・・なんてどう?」
「いいね、ゆっくりするにはもってこいかな、でも・・・当ては有るんだろうね」笑いながら加持が
続ける「大学の頃みたいに野宿はご免だよ」
「古いこと蒸し返さないでよ、今回は大丈夫だから・・・」苦笑しながらミサトが言う。

〜〜学生の頃、ミサトと加持は今回のように泊りがけでドライブに出かけたのだが、旅をコーディネイト
したはずのミサトのミスで山中でガス欠→野宿<早い話が道を間違えたうえに強行軍で自滅>
                              と言う、笑い話があったのである。〜〜

そんな他愛もない昔話をしながら、木漏れ日の降り注ぐワインディングを
                       ミサトと加持を乗せてアルファはゆったりと走っていく。
「おっ!」加持がいきなり身体を起こし、何かを見つけたらしく、嬉しそうに声をあげる。
 「まだやってたんだな・・・」
「何が?加地君」ミサトが加持の視線の先を追うと古ぼけた家屋が見える。「何?あそこ??」
「ここらで一番の蕎麦屋さ、そろそろ昼時だし、あそこで食べていこう葛城」ミサトに微笑みながら
加持はそう告げた。

 ミサトはアルファを店の脇の空き地に停めて、加持と一緒にその店に入った。
「何か良い感じね、時代を感じさせてくれるわ」暖簾をくぐった後、素直な感想を呟くと加持を見る。
「嬉しいね、昔と変わってないよ」加持は懐かしそうに目を細める。
席につくと人の良さそうな、いかにもと言うような{おばちゃん}が水滴の付いたコップを持って二人の
前に来ると「何になさいます?・・・あんたリョウジちゃんかい?!」注文を聞きに来たのに、いきなり
頓狂な声をあげる。
「お久しぶり、おばちゃん・・・」そう言うと加持は照れくさそうに鼻を掻く。
「いきなり来なくなったから、心配してたんだよ」「急な仕事だったからさ・・・」
そんな二人のやり取りを眺めながらミサトは思う。
(昔っからそうだけど、色んな処に知り合いがいるのね・・・感心しちゃう)

「ところでリョウジちゃん、こっちのお嬢さんは?お嫁さんかい?」
                             そう聞くと、いきなりミサトの方を向く。
慌てて挨拶するミサト・・・「は・初めまして葛城ミサトといいます。」
「ミサトちゃんかい、よろしくねぇ、おばちゃんは牛島 民って言うんだ」そう言うとまた続ける。
「どうだい、リョウジちゃんは?優しいかい」「お・・おばちゃん、そんな事より美味い蕎麦頼むよ」
はぐらかそうとする様に民に注文する加持。
「それに俺はまだ独身だって・・・」「照れるんじゃないよ、この子は。式にはちゃんと呼んどくれよ」
そう言うと、笑いながら奥にひっこんで行く。
「悪いね葛城、昔からのなじみでさ、一言多いのが・・ね」苦笑しながらミサトに言う。
「ううん、優しそうな人ね。ねぇ、ここの昔のこと聞かせてよ」
そう言われて、加持は自分が出入りしていた頃のことを話し出す。
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・・・・・・「ご馳走様、おばちゃん  また来るよ」「ああ、何時でも寄っとくれ、ミサトちゃんもね」
「はい!必ず。」ミサトは民に嬉しそうに答える。
アルファに乗り込み、走り出してミラーを見ると、民が手を振っているのが見えた・・・・・・・・・・


                   {温泉宿にて・・・}           

                     {01}
  
 日が少しだけ西に傾きかけた頃、ミサトと加持を乗せたアルファは目的の場所に着いた。
ガチャッ・・・「ん〜〜〜っ」・・・バタン・・・・・・
二人は示し合わせたように車を降りると大きく伸びをした。「へぇ〜〜っ」加持が感嘆の声をあげる。
「こっちにこんな温泉宿が在ったのか」素直に感心する加持にミサトが続ける。
「意外と穴場なのよ、ここって・・・リツコ達と何度か来てるんだけどね・・・」
「でも、あんなお店を知ってる加地君が知らないなんて、そっちのほうが以外よホントに・・・」
くすっと笑いながらミサトが言う。「俺にだって来ない場所くらい在るさ」加持が笑って返す。
樹齢何百年かのプレートに[旅館 森静(しんせい)]とある。
そして、歩き出した加持にミサトが追いついて言う。
「ここって部屋が全部はなれ座敷になってるし、大浴場の他に全部の部屋に露天の岩風呂がついてるのよ」
嬉しそうに続けるミサト「だから、お風呂に使って景色を眺めながら、ゆ〜〜っくりお酒が楽しめるわよ。」
「へぇ〜、そりゃあいいね」加持が嬉しそうに双眸を崩す。
 
 話しているうちに旅館の入り口をくぐって、ミサトが帳場に声をかける。「すいませ〜〜ん」
「はい、いらっしゃいませ〜」奥から物腰の柔らかい女性が現れた、女将であろう。
「昨日、予約を入れた葛城ですけど。」「えぇ、賜っております。お久しぶりですね、葛城さん。」
そう言うと女将は奥に向かって呼びかけた。
「ゆきちゃん、お客様を〔紅葉の間〕にご案内して頂戴。」「は〜〜い」奥から元気の良い
返事が返ってきた。ミサトは嬉しそうに微笑む、どうやら〔ゆきちゃん〕を知っているらしい。
「いらっしゃいませぇ〜・・・ああぁっ!!ミサトお姉ちゃん!!」挨拶をしながら出てきたが、
お客がミサト達とは、知らされていなかったようだ。「久しぶりねっ、ゆきちゃん」ミサトがウィンクする。
「うん、久しぶりっ!早く上がってよ、今、案内するからねっ!」
そう言うと、嬉しそうにミサトと加持のバッグを持つ。「どうぞ、こちらです。ミサトさん、加持さん」
「えっ!?何で俺の名前を?」加持が驚く、それはそうである、加持は自分の自己紹介をしていないのだ。
「前にねっ、お姉ちゃんに聞いたの、イメージ通りだからすぐ判ったよ」そう言うと、コロコロと笑う。
「ははっ・・そうだったのか」微笑みながらそう言うと、ミサトをチラリと見る加持。
ミサトは悪戯がばれた子供のように、鼻の頭を掻きながら笑っていた。
(やれやれ、どんな話を聞いたことか・・・)微笑みながら肩をすくめる加持だった・・・
「こちらが紅葉の間で〜す。」そうこうしているうちに部屋の前まで来ていたようだ。
「一番景色の良い部屋だよ、ね〜ミサトさん。」そう言いながら、
                            上がりかまちを抜けて部屋の襖を開ける。
眺望の良い景色が窓の向こうから目に飛び込んでくる。
どうやらここは、この旅館のもっとも高い位置にある部屋のようである。
「夕食は午後7時からとなっております、お持ちする前にご連絡致しますので・・・」三つ指を付いて
そう言ってから、悪戯っぽく笑うと、こう続けた。「ミサトさん、加持さん、明日、時間があったら
                            景色の良い秘密の場所を案内してあげるね。」
そう言うと、ゆきちゃんは紅葉の間を後にした。微笑むミサトとあっけに取られている加持を残して・・・
「葛城はここの常連さんって訳か・・・」我に返ったように加持が言う。
「正確には、私とリッちゃんだけどね」そう言ってから続けて言う。
「さっきの娘は森下 雪美ちゃん16歳、それで女将さんが森下 静さん、ゆきちゃんのお母さんよ。」
「確かに目元なんかそっくりだね」観察力はさすがである。「さすがねぇ、加地君」そう言った後、
「さぁ、ゆっくり休暇を楽しみましょ、加・地・君♪」心の底から嬉しそうにミサトが宣言した。


                      {02}


 部屋の窓辺のソファーから大きな影がひとつ部屋の中に伸びている。
いや、正確には二つの影が重なって大きな影をなしているのだ、ソファーに座ったミサトと
それを後ろから優しく包むように抱きしめる加持の影である。どれだけの間であろうか、
長い時間、身動ぎ(みじろぎ)せずに重なる影「んっ・・・はぁ〜」やがて静かな溜息とともに、
影に二つの頭が出来る・・・・・潤んだ瞳で加持を見上げるミサトと微笑みながらミサトを見つめる加持、
何を語るわけでもない、みつめあったまま、また、ひとつの大きな影が作られる・・・・・・

 長い長い儀式の後、ミサトが加持に明るく言った。
「加持君、私ちょっと女将さんに挨拶に言ってくるから、お風呂にでも浸かっててよ」
そう言い残してミサトは部屋を出ていった。「じゃあ、お言葉に甘えますか・・・」そう言うと加持は
浴衣を持ち、部屋に付いた岩風呂の脱衣所に入っていった。

脱衣所には、お約束の藤の籠と・・・・・なぜかお盆と日本酒(歌人・故、若山牧水{実在、宮崎生まれ}
がこよなく愛したと言われる地酒・”天城の白梅”であった。{””これは探しても見つかりません、
作者の創造した物です。})、それに徳利と杯・・・・・・・・・
「ははははは・・・葛城が常連の宿なのはホントなんだな」可笑しそうに笑うと加持は着ている物を脱いで
藤の籠に入れると腰にタオルを巻いてから片手に清酒を入れた徳利と杯を載せた盆を持ち、ゆっくりと
風呂に向かった。

 カラララ・・・・・脱衣所と浴室の境界を開けて浴室に出ると前面に視界が広がる。
「確かに最高のロケーションだな・・・」そう言いながら盆を湯船に浮かべ、掛湯をして浴槽に入ると
湯船の縁に持たれるようにすると、ゆっくり景色を楽しみ出した。
「蝉時雨の中でのんびり湯に浸かる・・・か、たまには良いもんだ・・・・・」
                     そう言いながら、杯に清酒を注ぐと一口喉に流し込む。
「ふぅ〜」(普段、俺達がいる世界とは本当に逆の世界か・・・・・)なぜか苦笑いが出る。
探り、企み、滅ぼす・・・自分達が生き残る為とはいえ、薄ら寒い世界に棲んでいるのは間違いのない事実
だ、真実が見たくて自ら望んで飛び込んだ世界である、後悔はない・・・でも・・・
だからこそ癒される。(この暖かな世界が残したくて生きてるのかもな・・・)
珍しくセンチな自分に気づき、苦笑しながら杯の残った酒を飲み干す。
(安心できる女性(ミサト)と二人だけの世界で、張り詰めていたものが消えたみたいだな・・・)
大きく伸びをして新たに酒を注ごうとした時、境界が動いた。
カラッ・・・・・・・・
振り返ると、バスタオルに身を包んだミサトである。
(戻った事にさえ気付かないとはね・・・)期限付ではあるが、自由であることに改めて苦笑する。
「なに?・・・気持ち悪いわよ、加地君」不思議そうな顔をしてミサトが隣に来た。
「いや、無性に嬉しかったんだよ、それで・・・ね・・・」そう言った加持の顔を見つめていたミサトは
何も言わずに頷くと、清酒を杯に注いで彼に渡し、自らも杯を持つと杯を併せて言った。
「この時間が何度となく続くことを祈って・・・」杯を一気に空けると加持に寄り添うようにして
しな垂れかかる。
 
 加持は杯を置くと、ミサトの額に口ずける・・・そっと瞳を開けたミサトの頬に手を当てると 
薄く開いたミサトの唇をふさぐ。
やがて加持の舌がミサトの唇を割って入ってくる、ミサトも求める様に加持の舌に絡めてくる。

ピチャピチャ・・・・・チャプン・・・・・お互いを求める音と、時折震えるミサトが起こす水音が
静かに響く・・・「んっ、ぁはっ・・」二人の唇が離れ、みつめあう二人。
そして加持の唇が耳元に移り、耳たぶを優しく噛み、舌が形をなぞる。
熱い吐息と共に言葉が流れこむ・・・「ミサト・・・愛してる・・・」「はんっ・・・ぅうん」
唇と舌が首筋をなぞり降りてくる。鎖骨と首筋にキスの雨が降り、胸元のバスタオルに手が掛かった時、
ミサトは初めて拒む仕草を見せた。加持は手を止め、ミサトの顔を覗く。
「だ・・駄目・・・明るくて・・・傷が・・・醜いから・・・」そう言うと、胸元を手で隠すようにする。
加持はミサトの目を見つめると、こう囁く。
「そんな事ないよ、醜くなんて絶対にない。」
「君を生かそうとしてくれた、君の家族の想いが残っているんだ、神々しくさえある。」
「その想いも全部ひっくるめた君を愛したんだ、そんな風に考えちゃいけない。」
そう告げると、ミサトを力強く抱きしめた。
ミサトの目から大粒の涙が溢れ出す。「加地・君・・・・・リョウジ・・・・」震える声でそう呟くと、
加持の頭を抱きしめ、唇を押し付けるようにキスをする・・・・・・・
ミサトは自分から静かに胸元を開き加持を誘う{いざなう}・・・
神聖な物に触れるように、加持の指が・・・唇が、ミサトの存在の証をなぞる。
「あっ・・・」ミサトは小さく震えると、そっと包むように加持の肩から手を回した。
女神を崇める様に、幾度と無く証に口づけをする加持・・・それを見守るように俯き、包み込むミサト。
加持の手が片方の乳房を掬い上げるように包み込み、その頂点を指が摘み擦った。
もう片方の頂点には加持の顔が寄り、桜色の突起を口に含み、噛み擦る・・・
「あっ、んくぅっ・・・」水面が波立ち、しなやかな腕が戒めるようにギュッっと締まる。
「あっああ、あん・・・ぅぅん」
「はぁはあはあ・・・・・あうんっ・・・リョ・・・リョ・・ウジィ・・・」
無骨だが繊細な動きの掌と、柔らかで少しざらつく舌に二つの丘を刺激され、
                                 切なさと心地よい痺れが声になる。
 呼吸が早くなり、ミサトの顔がピンクに染まる頃、加持は彼女を抱き上げ風呂の縁に腰掛けさせると、
彼の両の掌と唇が鳩尾当たりから、キスと共に滑るように流れ降りていく。
脚の付け根の茂みに唇が触れる・・・・・加持の舌が、ヴァギナの周りをなぞり、中に入ってくる。
その途端、「あんっ・・・」掠れる様に声のトーンが上がり、加持の髪を押さえ付けるように掴む。
ピチャ・・ピチャ・ピチャ・・・加持は奥から溢れ出してくる蜜を、舌で子犬のように舐める。
「あっ・・・あん・・・んっあっ・そこっっ・・」タオルが取れて束ねた髪が風にそよいだ。
ミサトは加持の奏でる音に同調するように声を出し、そのたびに美しくて長い髪が揺れる。
やがて加持は唇を離し「綺麗だ・・・」そう言うと、そっと塗れ光る綺麗なピンクの珠にキスをする。
「ひあっ!」と、一瞬だけ回りに響き渡るような声を上げるが、耐えるように指を歯に当て、身体を丸めて
声を殺そうとした。「んんっ、くぅっ・・・んあっ・・・あぅん・はぁん・・・」堪え切れず、微かだが
声が漏れる、それは回りに対する配慮だったのだろう。

                     [もたら]     
その証拠であるようにミサトは、加持によって齎される快感をごく自然に受け入れ、自然に要求していた。
「ひっあっっ・・・リ・リョウジ・・も・・もっと・・・もっと・・」求められるままに加持は与えた。
「あくっうぅ〜・・・ひ・んぅ・・・あっ・・・くはぁっ・・んんっ・・・」
小刻みな快感が電流のように走り、しだいに強くなり震えに変わる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」暫く声を噛み殺した刹那、それはやって来た。

 「あっあっあっあ、ああ〜〜っっ!!」堪えていた物が本流となり開放され、
                                 ミサトの思考は白い光に包まれた。

 

上り詰め、軽い失神状態のミサトを抱えて加持は湯に浸かると、彼女の頬に乱れて張り付いた髪を直した。


「可愛かったよ・・・凄く愛しかった・・・」照れくさそうに言う。
加持の声に静かに目を開き、照れて拗ねるように見上げると「・・・バカ・・・・・」そう言って
もたれ掛かると、ミサトは静かに目を閉じた。




 美しい夕日が二人の顔を朱に染める・・・・・・・・・・・・・・


安心して眠るように瞳を閉じ、加持の胸に身体を預けるミサト、
                  慈しむようにミサトを抱き、加持はそっと触れるだけのキスをする。

 

 


 静かに、そして緩やかに、木立を抜ける風と時間だけが二人の周りを抜けていく・・・・・・


                     

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