第一話「悪夢のはじまり」

 僕たちの小学生の時、それはまさしくボクシング全盛時代だった・・・・

 沢山の日本人世界チャンピオンがしょっちゅうTVで試合をしていた。

 それにキックボクシングのTVなんかもまだやっていたと思う。

 このお話は僕KENNと友達のK君が実際に体験したことのすべてです・・・

 僕もK君も自分で言うのもおかしいけれどとっても可愛い男の子だった・・

 マッシュルームカットで半ズボンからは長い脚・・特にK君は5年生にもなって

 まだ女の子に間違えられるほどの美少年!

 先生のつけたあだ名はバンビ1号、2号・・・

 2人とも運動神経はまあまあでそろってリレーの選手に選ばれたりしてた・・

 でも、2人ともやせっぽちで、特にK君は少しからだが弱いところもあったし

 性格的にもとっても優しい、まさしく「女の子みたいな」美少年だった・・・・

 僕らが友達と遊んでいて、いやだったのが「プロレスごっこ」だ!

 みんな僕らをターゲットに襲いかかってくる・・・・それだけでもいやなのに・・

 ガキ大将のMがおもちゃのボクシンググローブを使うようになったんだ・・・

 「ボクシングごっこ」や「キックボクシングごっこ」の始まりだ!

 公園の四角い砂場がリング・・当然、また僕らはターゲットになった・・・

 ガキ大将の手下みたいなやつがレフリー兼アナウンサーだ・・・

 僕のほうは何とか試合になったけれど、よくあざをつくったりしていた・・・

 K君はまったく惨めだった、まさしく連戦連敗・・・

 「青コーナー!バンビK!」「赤コーナーチャンピオンM!」カーン

 逃げ回るK君に友達の罵声が「男女!」「弱虫!」・・・・・

 一方的に打たれるK君・・・とうとう泣き出してしまうことも・・・・

 「バンビKダウーン!」

 半ズボンから伸びたすらりとした脚、ハイソックスを砂だらけにして泣きじゃくるK君・・

 そんな事が何回も・・・でもやっぱり試合をさせられる僕たちだった・・・

 「ボクシングごっこ」はエスカレートしてMは学校にまでグローブを持ち込んできた・・

 放課後先生に内緒で、体育準備室のマットを使って・・・

 何回も僕らは逃げた、でもとうとうパスできなくなって覚悟を決めて準備室へ・・・・

 そこに待っていたのは女番長で体格のいい空手を習っているN子だった・・・

 「おい、今日はあたしがみんなを鍛えてやるよ!」

 「最初!KENN、来い!」・・・・体操着にブルマーに素足のN子と対戦・・・

 あっという間にミドルキックをボディーに決められダウン・・・苦しくて立てない・・

 ひざまずくようにダウンした僕の目の前に太いN子の脚が・・・・

 「悔しい!」この時初めて思った、それに女の子にやられて何ともいえない・・・

 「悪い、悪い!KENN、ごめんな!」N子が言った。

 「次K来い!手加減してやるから・・・」上履きを脱いで白いハイソックスのK君・・

 N子はまず顔面に狙いをつけてジャブの連打・・・気が付くとK君は鼻血を・・・

 「ほら!攻めて来い、K!」でもK君は鼻血に驚いてしまい泣きべそを・・・

 「男だろ!」そう言うとN子はついにキック!ミドルが僕と同じボディーに・・・

 「あうっ・・」K君はあえなく崩れるようにダウン・・・・鼻血がマットに・・・

 それから白いハイソックスにも・・・・

 N子、K君のこと好きだった筈なんだけど・・・

 その後もN子の快進撃は続き次々に男の子をノックアウト!

 ついにMとの対戦!だが軍配はやはりN子に・・・・

 惨めにもダウンするM、何度も立ち上がるがついにKO・・

 さすがにこれ以降「ボクシングごっこ」はやらなくなった、それに誰か親に話したみたいで

 先生にひどく怒られた・・・

 正直ホッとした2人だったが・・・ある日K君が僕に・・

 「ねえ、僕お父さんに駅前のボクシングジムに行け!って言われてて・・」

 「僕、ものすごくいやなんだ、すぐ止めるからお願い!一緒に行って!」

 可愛い親友の頼み、断れずに2人はボクシングジムへ・・・6年生の春のこと・・

 「すぐやめちゃうよな!」「うん、やだもんね!」

 だが、今まで以上に屈辱的な悪夢が僕たちを待っていた・・・

 

                               

      続く

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