第29回 陽気なカモメ
「父親がボクサー/トレーナー」という設定は、ボクシング漫画においてその動機付けとして
しばしば用いられるようです。これに、「既に他界している」「チャンピオンになれなかった」
などの設定が動機付けを更に強化するものになっています。そして、意外にも「ボクサーの娘」
という設定は決して稀ではないようです。これは、娘では自分の跡を継げない、という
無念さを増強する小道具として作用するようです(他に、男を色香で釣って動機付けさせる
作用もあるようですが)。この場合、成長した娘のとれる行動は、男のコーチ等に甘んじ
ることしかありませんでした。
この渚ちゃんも、そのパターンに当てはまるようです。初期には主人公を凌駕するスピード
で圧倒してくれますが、いつの間にか逆転されてしまい大きな屈辱を味わうことになります。
しかし、女性にもボクシングへの参加の道が開けた今、こうした構図が変化してくる可能性が
出てきました。今後、そういった新たな構造を持った作品が発表されていくことを願ってやみません。
小学館・少年サンデーコミックス「陽気なカモメ」1巻
六田登 著
昭和59年3月15日 第1刷発行
定価360円(税別)
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Special Thanks ヒバナさん