「〜少年たちの対決・第1部〜」

Dedicated to Mr. 猫GLOBEX

 

第4話:激闘

 

カァァーン!

ついに決戦のゴングが!

Tくんはお兄さんに教わってるし、Yくんも腕っぷしが強いし・・・何か大変なこ

とが起きそうな気がする・・・リングの回りを取り囲んだ女の子たちは、学校の

アイドル同士の対決に、不安そうな顔で成り行きを見つめて・・・

でも・・・闘いに臨む2人の勇者は、高窓から差し込む午後の日差しのスポット

ライトを浴びて・・・なんて気高い・・・

Tくんがまず牽制のジャブを繰り出した。フットワークを使って・・・さすがに

サマになってる!一方のYくんは自信ありげに、冷静に・・・Tくんが少しでも気

をゆるめると、すぐにパンチを伸ばしてくる。なんて長い手・・・

Tくんはジャブを出しながらどんどんYくんを追い詰める。そしてストレートが顔

面をかすめる!Yくんさすがにびっくりして、真剣な表情・・・

「へへ、ブチのめしてやるぜ!」またTくんの挑発・・・

Yくんがどんどん前進を始めた!ガードをガッチリ固めて・・・少しくらい打た

れても、我慢して接近しようとしてるみたいだ。

Tくんもその迫力に負けじとパンチを浴びせる・・・いつのまにかTくんはロープ

際に・・・手を出してもYくんのブロックに阻まれて・・・

あ!Yくんがついにパンチを放った!打ち疲れたTくんの顔面に・・・

バシッ!

すごい音が!きのう僕が目撃したYくんの練習そのものの強烈な左ストレート!

続けて右!・・・また左!・・・Tくんの顔が苦痛に歪む・・・

Tくん、たまらずYくんに体をあずけて・・・Yくんもみんなも(もちろん僕も)

ルールなんてあんまり知らないから、反則だと思って・・・

「ハァハァ、このやろ、なにすんだっ・・・」

「抱き付くなんて、ずるいぞ!」Tくんに一斉に罵声が・・・

「ブレイクッ!さあ離れて!」U先生の指示でようやく2人は離れたけど・・・

Tくんが、離れ際に油断したYくんの不意を突いてボディに連打を!

「ふぐうっ・・・!」Yくんのうめき声・・・

あっという間に形勢逆転した!今度はTくんが手の止ったYくんにパンチを浴びせ

る・・・

「くっそー!きたねぇぞ!」Yくんも負けずに・・・

パシッ!ドスッ!ビシッ!すごい打ち合いだ!汗が飛び散る!

2人とも打たれて顔が赤くなってる・・・

Yくんの方がパンチ力があるみたいだ・・・Tくんの鼻から赤いものが・・・僕は

この光景がさっきの自分の試合と重なって、興奮が涌き上がっていた・・・

ついにYくんが打ち勝って、Tくんをコーナーに追い込む!コーナーマットに押し

つけながら・・・左右ワンツー!ボディにも・・・

力なくロープにもたれかかっているTくん・・・ガードの腕も下がって、Yくんの

パンチを浴びるがまま・・・もうぐったりしている・・・

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「Tくん!・・・」ああ、もうだめか・・・

「キャーッ!」女の子から悲鳴が!座り込む子も・・・

カァーン!

Tくんはゴングに救われた形になった・・・(ふぅ・・・)見ている僕まで汗びっ

しょり・・・でも次のラウンドはもう・・・

「よっ・・いしょ・・Tくん、だ、大丈夫?・・・もうヤバイよ・・・」

ふらふらのTくんを肩で抱きかかえた。

・・・ああ、カッコイイTくんの・・汗のにおいを・・独り占め・・・・・・(

な、何を考えてるんだ僕は!)・・・

「なんでぇ、偉そうな事言ったくせに・・・もうギブアップしたらどうだ!」勝

ち誇ったようなYくん・・・

やっとのことで椅子に座らせた。ハァハァと荒い呼吸・・・血のにじんだマウス

ピースをダラリと吐き出して・・・

ちょうどTくんのお兄さんが駆けつけてきた。

「うわ、お前ひどくやられたな!このままじゃ次のラウンドで倒されちまうぞ。・

・・よし、挽回できる作戦を教えてやるからな。」

お兄さんはTくんの鼻血をふきながら、身振り手振りで指示している。

「ハァッ、ハァッ・・・う・・・うん・・わかった・・・」

カーン!

第2ラウンドが始まった。

Tくん、足取りは重いけど、お兄さんに背中を叩かれて気合いが入った!

リングの中央に進むと、Tくんは姿勢を低くしてゆっくり上体を振り始めた。Yく

んのパンチは、打つ目標を捕えることができなくて空振りを続ける・・・

「ちっきしょうっ!このっ、このっ・・・」

と・・Yくんがいらだってパンチが大きく流れたところに、Tくんが強烈な左ボディ

フックを!

ドスッ!・・・鈍い音が・・・ちょうどみぞおちのあたりにグローブがめりこん

だ!

「うげっ・・・!」

Yくんはお腹を両手で押さえながら前かがみに・・・さらに続けて突き上げるよ

うな右フックがまともにヒットした!

ガシャッ!「がはっ!!」

すごい音と苦痛の叫び!Yくん、ヨロヨロとよろけてロープにバウンド・・・無

防備に跳ね返ったところに、今度は渾身の右ストレート!Yくんの顔面が波打つ

ように歪んだ!

「ぶぎゃっ・・・!」

腰からダウンしたYくん、長い足を投げ出して、やがてマットに沈んだ・・・

「・・・はっ・・・くはっ・・・」

ボディブローが効いているみたいだ・・・苦しそうにうめいて・・・口からはよ

だれが流れている。カウントが進む・・・

「キャーッ!」「いやーっ!」女の子たちが泣き叫んでる・・・

「Y!立てーっ!これで終わっていいのかよっ!」あっちのコーナーから声が飛

ぶ。

「くっ・・・くっそおーっ!」

あっ、Yくんロープをつかんで・・・体を引き上げた・・・すごい闘志だ!

先生にグローブをにぎられて、でも鼻血がボタボタと・・・

「おい、まだやるのか?」という問いにも、グローブで鼻血をふきながら、

「ハーッ、ハーッ、と・・当然ですよ・・・せ・・先生だってこの試合・・・もっ

と見たいんでしょ?・・・」

U先生、ちょっとぎくっとしたような・・・(図星ってやつ?)

「わ、わかった・・・・続行だ、ファイト!」

「ハァ、ハァ、・・・そうだよな、こんなに早く終わっちゃ、俺もつまんねぇし

な!」Tくんの挑発に、Yくん唇を噛んで悔しさをあらわに・・・

ああ、こんな血みどろの闘いがまだ続くなんて・・・

(つづく)

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